やさしい手のひら・後編
「私帰る」

ここにはいたくなかった

健太のこと言われたのも腹が立ったけど、凌にもう来るな、と言われたことが何より悲しくて、腹が立った

私が椅子から立ち上がり、荷物を持とうとした時

「…」

私の手首を凌が掴んでいた

「帰るな」

私は凌を見ることが出来ず、すくんだまま動けないでいた

「俺、言ってること矛盾してるよな。毎日来てほしいのに、来るなとか言ったり、川崎さんのこと忘れてほしいのに…。ごめん」

凌の声がだんだん小さくなっていくのがわかった

「私と健太はもう本当に関係ないの。だから…もう…」

なんの涙なんだろう

健太のことを思い出した涙?

それとも凌の切ない声を聞いた涙?

私は静かに涙を流していた

グイッ

「キヤッ」

手首を引かれ、私はベットの上に座らされていた



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