やさしい手のひら・後編
思いっきり引っ張られたので、私の髪が乱れて口に掛かっていた

凌がソッと私の乱れた髪を直してくれる

私が凌の目を見ると、凌も私の目を見ていた

私達は、見つめ合ったままお互い目を逸らそうとしない

ベットの上で自分の体を支えている腕が小刻みに震えている

このまま私が目を閉じればきっと・・・

凌が私の頬を指先で軽く触れる

生暖かい感触が頬から伝わってきて、一瞬だけ目を逸らした隙に・・・

私と凌は唇を重ねていた

私は初めて凌とキスを交わした日のことを思い出していた

心臓をドキドキさせて、初めて人の唇と重なったあの空間

そしてキスの後、「亜美、好きだよ」そう言った凌の顔が今でも鮮明に憶えている

懐かしさと切なさで私の頬を一適の涙が流れていった

「ごめん」

「あの時も・・・初めてキスをした時も、凌謝ったよね」

「・・・」

「謝るならしないでよね」

そう言って私が笑うと、ホッとしたのか凌も笑った

「でもやっぱり、ごめん」

「・・・」

「俺、何やってんだよ」

と、言って頭をクシャクシャと掻き回した

「凌・・・リハビリ頑張るんだよ」

「はあ?」

「だからリハビリ」

凌の励みになるなら・・・

私は何でもしてあげたいと思った

でもさっきのキスは・・・

私もしたい・・・そう思ってしまったんだ


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