やさしい手のひら・後編
部屋に着くと凌は車椅子から自分でベットへ移ろうとしていた

「危ない!」

バランスを崩し勢いよくベットに倒れて行った

「だ、大丈夫?」

「今日は帰って」

「えっ?」

「頼むから今日はもう帰ってくれ」

私の目も見ないで冷たく言われてしまった

「ごめんね。疲れてるのに気がつかなくて・・・明日また来るから」

「当分来なくていいから」

「でも・・・」

「いいって言ってるだろ」

大きいな声で怒鳴る凌

「うん・・・。わかった」

今の凌に何を言っても通じない。私はそう思い

「何かあったら・・・連絡してね」

バックを急いで掴み、私は部屋を飛び出した

私がいることで重荷になるなら・・・

リハビリに集中できないなら・・・

ここには当分顔を出さない方がいいのかもしれない

でも・・・

自分の気持ちを押し殺したまま私はドアの方を見て、凌の病院を後にした

心残りのあるまま病院を出て来た私は、心地良い外の空気に触れ歩いていた

体が動かない自分への葛藤で凌はきっと落ち込んでしまったのだろう

イライラしていた凌を思い出す

汗だくになって必死でリハビリしていた

負けず嫌いな凌だから絶対乗り越えてくれるよね・・・

私は夕日が沈みそうな空を見上げていた

今の私は影で応援することしかできないんだね・・・

「凌、頑張って」

私はそう呟き、マンションへ向かった



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