やさしい手のひら・後編
「もういいだろ」

「うん…」

「たぶん…お前にリハビリする姿見られたくないんだろ」

「…」

あの時…

リハビリ前までは普通に会話していたのに、リハビリが終わって出て来た時には私と目を合わせなくて、険しい顔をしていた

「男ってよ。自分の弱い所見せたくないんだよ。それが自分の好きな女なら余計にな」

新くんはしみじみと言い、

「動くことを願おう」

そう言って、私の右手を力強く握った

男の人でも女の人でも自分の惨めな姿は見られたくない

私だってそうだ

だから私は新くんが言ったことに頷き、握ってくれた手を握り返した

「よし、お前の好きなハンバーグでも食べに行くか」

「うん」

これでいいんだよね…

深入りする前に離れていいんだよね…

誰にも言えないあやふやな気持ちを胸にしまい、私は凌から離れることにし、自分からあの病院に行かないことに決めた




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