やさしい手のひら・後編
「亜美、噂だからね。だからまだはっきり決まった訳じゃないから」

私は頭の中が真っ白だった。噂でもやっぱり嫌だ…

そう思ってしまった

私の中で健太がまだ残っていること

それは確かだった

目の前が歪みだす

押さえていた気持ちが一気に込み上げ、涙として流れていく

結婚してしまえば、もう何もかも終わり

二度と付き合うことはないことがわかっていても、結婚になると希望も夢もなくなる

永遠という誓いで健太と佐原樹里が結ばれてしまう

「健太…」

由里が泣いている私を見て

「亜美…やっぱり忘れられないんだね」

忘れたつもりでいたのに…

それなのに私の記憶はまた再び動きだす

「ごめんね、余計なこと言って…」

「ううん。いずれわかることだから…」

マスコミがあの二人を放っておくはずがない

いつか私の耳に入ってくること

でもあまりにも突然のことで私は立ちすくんだまま、気を失い掛けていた



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