やさしい手のひら・後編
「だめ…」

健太の声を聞く前に私は携帯を閉じてしまった

声を聞けばどんどん思いが膨れ上がる

でも新くんの顔が頭に浮かぶ

「もう新くんを裏切れない」

そう思っているのに…

♪♪♪~

持っていた携帯が鳴っている

「健太…」

健太からの電話だった

途中で切ったけど健太には着信が残ったまま

折り返し電話をくれたんだ

出れば声が聞ける

私はボタンを押していた

「もしもし」

小さい声で電話に出た

「亜美か?」

名前を呼ばれた瞬間、聞きたかった声が聞こえ、思いが込み上げ私はもうすでに泣いていた

「健太…」

声にならないぐらいの細い声で健太を呼ぶ

「何かあったのか?」

優しい声で私に問い掛けてくれる。それだけで私の心は穏やかになり、癒されていく

でも聞きたいんだ

本当に佐原樹里と結婚するのかを…





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