やさしい手のひら・後編
「俺は亜美と別れることはできないって言ったんだ。でも受け入れてくれなかった。モデルが出来なくなるって泣かれて…俺はなんてことをしてしまったんだろうって…目の前が真っ暗だった。こんな形で亜美を失ってしまうのかと…」

健太は下を向いたまま声が震えていた

「だからあの日は亜美と別れるために帰った。泣き叫ぶ亜美を何度も何度も抱き締めたいと思った。でも責任を取ると決めた以上、亜美を抱き締めることができなかった。あんなきつい言葉を言うしかなかったんだ」

あの日の光景を思い出す

こんなことがあったなんて知らずに、私は必死になって健太にすがっていた

知っていたら私はどうなっていただろう

「だから俺は…あいつと結婚する」

顔を上げて健太は星空を見つめて言った

「ウワーン」

私は声を出し泣いていた

これが運命なのか、私達には未来がない

どんなに思い合っても、どんなに愛し合っても一緒にいられない

そんな決められた道に私はただ涙を流すしかなかった



< 162 / 199 >

この作品をシェア

pagetop