やさしい手のひら・後編
力強くお互いに手を握り締めながら教会を後にしようとしていた

私は出口で後ろを振り返った

健太とここで式を挙げたかった

ある訳がない私達の結婚式を想像していた

どんなに願っても私の夢は叶わなかった

こんなに近くに健太がいるのにここを離れたら、他人となり、別な人の夫となる

こんな現実を私は受け入れなくてはいけないんだね

ドアを閉め、車までの道のりさえ、もったいなくて帰りたくなくなる

こんな綺麗な星の下で私達は別れなければいけないなんて…

なんて残酷なんだろう

車に乗ってからも健太は私の左手を離さなかった

このままどこか遠くへ逃げたい

誰もいない場所で二人だけで…

今運転を邪魔して、ハンドルを揺らせば…

そんなバカなことまで考えてしまう

別れてから何度も再会してきたが本当に最後なんだ

マンションに近付くにつれ、私は胸が張り裂けそうなぐらい、心臓が痛くなっていた




< 167 / 199 >

この作品をシェア

pagetop