やさしい手のひら・後編
マンションの場所を教えるのさえ苦痛で・・・

「そこ・・・右」

もう着いてしまう

嫌だ

お願い健太

佐原樹里との結婚、嘘だと言って・・・

辛くて、苦しく、自然に涙が溢れてくる

「健太・・・」

健太は何も言わず私の方を向き涙を拭いてくれる

「ねぇ、嘘なんだよね?結婚するって嘘なんだよね?」

「・・・」

「どうして一緒にいられないの・・・どうして好きでもない人と結婚しなきゃいけないの・・・私はこのまま離れるなんて・・・」

涙で声にならなくて、下を向くと涙が私のスカートに落ちていった

「こうするしかないんだ」

「どうしてー」

「泣かないでくれ・・・俺も辛いんだ」

「嫌・・・だ・・・よ」

何度も嫌だと首を横に振った

納得なんてできない

認めたくない

でもこんなに泣いても叫んでも、健太はあの日別れた日のように頷いてはくれなかった

「亜美、幸せになってくれ」

「健太がいないのにどうやって幸せになれるって言うの!そんなの・・・責任逃れだよ」

「亜美の言う通りそうかもしれない。でももう俺は幸せにしてやることはできない。だから新に託すしかないんだ」

「こんな気持ちで新くんと一緒にいたって幸せになんかなれない・・・なれる訳ない・・・よ」

「新はどんな亜美でも受け入れてくれる」

「ずるいよ・・・健太」

健太はそれでいいんだ・・・

虚しいね・・・

最後は私一人ぼっちなんだね・・・




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