やさしい手のひら・後編
「新くんに甘えていいんじゃない?それを新くんも望んでいると思うわ」

「・・・」

私が田村さんの顔を見ると田村さんは一度だけ頷き、甘えていいのよ、そう言っている顔をしていた

「まだ若いんだからいっぱい恋をしようね」

私の頭をポンポンと撫でてニコッと笑ってスタッフの所まで行ってしまった

一人で廊下に出て控え室まで歩いていると

「亜美ちゃん」

男の人の声が聞こえゆっくり振り向くと・・・

「祐介くん」

「久しぶりだね」

「そうだね・・・」

祐介くんに会うのはプロモーションビデオの撮影以来だった。健太と関わっている人には今はまだ会いたくなかった

「元気?」

「うん・・・」

「健太ね・・・」

やっぱり健太の話し

「毎日、寂しそうな顔してる。ため息ばっかりついてさ・・・」

どうして?佐原樹里といるのに幸せじゃないの?

「俺達に何も言ってくれないから亜美ちゃんとどうして別れたのかもわからないままなんだ」

祐介くんも知らないなんて・・・

「なんか健太変わっちゃってな。口数も少ないし、いつも佐原が傍にいるし」

「・・・」

「仕事に関しても適当っていうか、投げやりというか・・・」

「祐介くん・・・私、もうちゃんと健太とお別れしたの。だから今はもう健太のことを言われても・・・」

「あっ、そうだよね。ごめんごめん」

「もう私は何もしてあげれないから・・・」

「ほんとごめん」

「祐介くんは・・・由里を大事にしてあげてね」

「そうだね。大事にしないとな」

「じゃあ、私行くね」

そう言って横を通ろうと歩き出した

「亜美ちゃん。健太、上にいるよ」

「だから祐介くん私にはもう関係ないから」

「わかってるよ。ただ上にいること伝えたかっただけ」

手を上げて祐介くんは私の前から消えてしまった
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