やさしい手のひら・後編
車に乗ってから、やっと新くんが話し掛けてくれた

「行きたくなかった?」

「どうして?」

「普通はやっぱり行きたくないだろ?」

「うーん・・・だけど新くんがいるから・・・」

「なんか自分でもわからないけどムキになってた・・・ごめん。断ることもできたのに・・・」

「ううん。芸能人のパーティーなんて行ったことないし、楽しみだよ」

不安なんだ。新くんはまだまだ私の気持ちに不安なんだ

「今日帰る?」

「うーん?どうしようかな」

「俺の所泊まって行けば?」

「うん・・・そうする」

少しでも新くんと一緒にいたいと思った

それは同情じゃなくてちゃんとした本心からの気持ち

マンションの駐車場に車を止めて二人で部屋に入る

私は新くんと付き合ってからここに泊まったことがなかった

新くんはいつも私の所に来てもどんなに遅くなっても自分のマンションに帰っていた。そしてここに来ても私を必ず家に送ってくれていた

私達はまだ体を重ねていなかった
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