やさしい手のひら・後編
「よし、いいよ。俺も入ってくる」

そう言ってお風呂場に行ってしまった

ソファにゆっくり腰を降ろす

ここで熱を出した私を看病してくれたよね・・・

そんなことを考える

ここでもいっぱい泣いたよね・・・

ブカブカのTシャツから新くんの匂いが漂う

私は今、この人と一緒にいるんだ・・・

胸の辺りのTシャツをギュッと握ってみた

新くん私ね、ちゃんと新くんを見ているんだよ

「寒くない?」

「うん」

上半身裸の新くんの姿に目をどこへ向けていいのか戸惑ってしまった

何度も見ているのに・・・

「ビール飲む?」

「うん」

缶を開けて私にビールを渡してくれる

「冷たくておいしいね」

フッと新くんが笑った。その顔が・・・

健太に似ていた

どうしてここで健太が出てきてしまうのだろう・・・

そんな自分に苛立つ

悔しい。何かをするたびに健太の顔が私の脳裏に飛び出してくる

思い出したくないのに・・・

いつまで私はこんなことをしているのだろうか・・・
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