やさしい手のひら・後編
「お前、遅せーよ」

「ちょ、ちょっと待って」

パーティー当日、前の日私のマンションに泊まっていた新くんが事務所に行くのに私を急がす

私は焦りながら準備をしていた

「忘れ物ないよね・・・あれ?携帯がない」

「ここにあるだろ」

と、言ってテーブルの上にある携帯に指を差す

「あっ、ほんとだ」

「いいか?行くぞ」

「うん」

カードキーでロックを掛け、私達は事務所に向った

「こんにちは」

「こんにちは」

私を待っていた田村さんがすぐ立ち上がり

「さあ、着替えに行きましょうか」

「はい」

「新くんは自分のスーツで行くのよね?」

「はい、持って来ました」

「じゃ、亜美ちゃん借りるわね」

いつもの控え室に入ると、スタイリストさんが私を待っていた

「亜美ちゃん、今日は凄く素敵なドレスを着るのよ」

スタイリストさんが掛けてあってドレスを私に見せてくれた

「えっ、これ私が着るんですか」

肩ひもだけのドレスで黒とレースで作られていて、ウエストがかなり絞られている

「私、着れますか?」

「亜美ちゃんのサイズよ」

「は・・・い」

こんなに肌が露出しているドレスだと思わなかったのでびっくりしてしまった

「ここ座って」

スタイリストさんが椅子に座った私を見る見るうちに別の顔にして行く

私はされるがまま、ただ目を閉じているだけ・・・

「はい、出来たわよ」

「うわー」

「パーティー用のメイクよ」

目がクリクリしている自分に驚く

「かなり別人ですよね・・・?」

「亜美ちゃんはね、いろんな顔を作れるの。整っているからね」

整っているって・・・それはどういう意味なのかな


< 49 / 199 >

この作品をシェア

pagetop