やさしい手のひら・後編
ギュッ

新くんが私を引き寄せた

「亜美・・・」

私は新くんを見るため顔を上げた

「俺と一緒に生きていかないか」

突き放しても新くんは何度でも私を追い掛けてくる

なんの狂いもない目で私を見つめている

真っ直ぐ私を見ている新くんの顔は穏やかで優しくて・・・

きっと今の私を包み込んでくれるだろう

この胸に飛び込めば私も癒されるのかもしれない

でもそれは今じゃない

私は首を横に振った

「健太を忘れられないことはわかっている。それでも・・・」

新くんは下を見て黙ってしまい

「健太の代わりでもいいんだ」

今どんな気持ちで言っているの?

代わりで付き合うなんてどんなに惨めなことか・・・

「きっと・・・新くんと付き合えば楽になれると思う・・・でもそれじゃ私は立ち直れない・・・」

「お前は俺を利用していいんだ。お前が一人で泣いているのを考えたら・・・俺が耐えられないんだ・・・」

新くんはもっと強く私を抱き締めた

「俺は亜美が心の底から笑ってくれればいいんだ。健太の横でいつも笑っていたあの笑顔で・・・」

私の頬に涙が流れる

健太・・・

私、ちゃんと笑いたい

健太がいなくても笑っていたいよ・・・
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