やさしい手のひら・後編
「ドレス着ようか?」

「はい」

ほんとに着れるのかな・・・

着ていた服を脱ぎ、ドレスを着て後ろのファスナーを上げてもらう

「ほら、ぴったりでしょ」

鏡を見た自分に思わず

「かわいいドレスですね」

ちょっと大人になった気分

「これにしてよかったわ」

後ろで腕を組んで見ていた田村さんが頷いている

「新くん呼んで来るわね」

そう言ってすぐ新くんを呼んで来た

「・・・」

「変・・・かな?」

「いや、いいんじゃね」

新くんが素っ気無い返事をした

「変なんでしょー」

「似合ってるよ」

顔を赤くしてすぐ横を向いてしまった

「新くん、惚れ直したでしょ」

田村さんが新くんを冷やかすと

「そんなことないですよ」

「ほんと素直じゃないんだから」

新くんは黒のスーツを着ていて、さすがモデルだけあってかっこいい

普段の私服と違い、とても大人っぽく見える

そんな姿に見惚れていると

「ほら、早く行くぞ」

「う、うん」

高いヒールのせいか少し歩きずらい

でもそんな私に新くんが気付いたのか

「ほら、転ぶ」

と言って手を繋いでくれる

新くんの車で会場へ向う車内で

「絶対、俺から離れるなよ」

「うん」

車に乗ってからずっと私の手を握ったままだった


< 50 / 199 >

この作品をシェア

pagetop