やさしい手のひら・後編
「俺は亜美を泣かせてばかりだな」

目の前に立つ健太を鼻を啜りながら見ていた

どれだけの月日、健太の顔を見ていなかっただろう

少し痩せた健太の頬に私は無意識に触れていた

そして健太の頬に触れていた私の手の上に健太が自分の手を重ねた

「俺が離したこの手をいつも取り戻したいと思っていた…」

心臓がギュッとなり切なくなる

「俺は間違っていたのか?」

「えっ…?」

私は健太の言っている意味がわからなくて首を傾げた

「これが亜美の幸せだと思っていた」

今、健太は真剣に何かを私に訴えようとしている

きっと私達の別れた理由なんだろう

私は健太の目を逸らさない。健太も私の目を逸らさない

お互い相手だけを見つめる

私も健太も今は周りのことなど忘れていて、離れていた間の溝を埋めて行くことに必死だった


< 61 / 199 >

この作品をシェア

pagetop