やさしい手のひら・後編
「俺がいなくても幸せだったか?」

「…どうして…どうしてそんなこと聞くの?そんなことわかってることでしょ!」

「いいから聞かせてくれ。幸せだったか?」

ひどいよ…聞かないでよ

でも思い出したんだ

新くんがいつも私を支えてくれたことを…

「亜美には今、新がいるんだよな?」

そう。私には新くんがいる

「俺にも樹里がいる」

聞きたかったけど聞けなかったことを健太が言った

「俺は佐原とは別れられない」

体に衝撃が走る。自分で気付かないうちに手足が震えている

頭の中で健太と佐原樹里が一緒にいたシーンがフラッシュバックする

私はまた現実に引きずり込まれてしまった

このひとときはなんだったのだろう

一瞬でも佐原樹里のことを忘れていた自分が愚かだった

涙が止まらず溢れ出る

その涙を健太が拭おうとしたが

「どうして…いつも…私を掻き乱す…の…」

こんな言葉しか返せなかった

やっぱり夢だったんだね…



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