やさしい手のひら・後編
「俺も亜美に戻りたい…でも無理なんだ」

何も言えなかった

私を抱く健太の腕の力が強くなる

だから私も抱き締めた

もう抱き締められることも抱き締めることもないから…

この感触を私は忘れない

「健太、これで最後に…しよう」

何があっても別れられないことがよくわかった

私がすがることで苦しんでいる健太を見たくない

「こんなに愛しいのに…俺は…」

「健太…」

私は泣きながら微笑んだ

「もういい加減忘れなきゃね」

今度こそ笑顔で…

そして今度こそ本当の別れ…

でもやっぱり涙は流れていて、止まることはなかった…


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