やさしい手のひら・後編
抱き締められている健太の腕から、大好きだよって伝わってくる

私の中で今まで辛かったことが浄化されていく

こうやって優しく接してくれたこと、健太と話せたこと。それが何よりも嬉しかった

「健太、私健太が大好き。きっとこれからも私の中でこの気持ちは生き続ける」

「俺は亜美を…」

そう言って私を見つめ

「愛してる」

健太の顔がゆっくり私に近付く

私はそっと目を綴じ

健太は私にキスをした

これが本当に最後のキス

健太の優しいキスに私は涙を流していた

もう戻れる可能性なんて1%もない

どんなに想っても健太と一緒になることはない

「私…行くね」

健太の腕からすり抜け離れると

「亜美…」

愛しい健太が切ない顔で私を見る

お互い好きだけど一緒にいられない

そんな恋もあるんだ

自分より大事で自分より大切で…

そんな想いを教えてくれた健太

「健太、バイバイ」

私は走って部屋を出た

もう二度と振り向かない

そんな思いで長い廊下を懸命に走った

ほんとは悲しくて、切なくて今でも自分が壊れてしまうんじゃないかというぐらい、私の心は悲しみで溢れていた



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