やさしい手のひら・後編
私は立ちすくんだまま、新くんを見ていた

「あ…」

私に気付いた新くんが険しい顔で私の方に駆け寄って来る

「どこ行ってたんだよ!」

誰が見ても怒っているのがわかるぐらい、強い口調で私を冷たい目で見る

「私、迷子になってて…」

「すんげぇ、心配したんだからな」

私の右手首を掴み、あっという間に新くんの胸に納まっていた

健太と違う匂いに戸惑ってしまう

健太じゃないのにさっきの余韻を思い出していた

今は新くんの腕の中

私は健太のことを考えたくなくて、自ら新くんにしがみ付いた

「心配掛けてごめん…ね」

「携帯は繋がらないし…一瞬、健太といるのかって、思った」

ドキッ

やましいことがあるからだろう

心臓が早く動きだす

「一緒にいる訳ないよ」

ばれないように、ばれないようにと心の中で叫ぶ

嘘をつくと人は相手の目を見れないという

今の私はまさにこの状態だった



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