やさしい手のひら・後編
新くんは私を胸から離し、私の顔を覗き込む

「一人にさせてごめんな」

新くんは何も悪くないのに謝らせてしまっていることに胸が痛くなる

ううん、と何度も首を横に振ると

「お前足どうした?」

血が固まり掛けている膝を見ていた

「あっ、ヒール高くて転んじゃった」

「バカだな」

そう言って微笑む笑顔に、また私は胸が痛くなる

嘘をつくということはこんなに苦しいものなんだ…

ついてしまった嘘に私は苦しめられていた

「一回会場に行って、挨拶してから帰ろう」

私の右手を絡ませ手を繋ぎ歩きだす

私は少しだけ新くんの後ろに歩き、新くんの背中を見ていた

ごめんね…

声に出せない言葉をただ繰り返し胸の中で唱えていた

会場に入ると私はすぐに健太を見つけてしまった

探すつもりはないのに見つけてしまう

そんな自分が嫌になる


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