やさしい手のひら・後編
「健太ったら探してもいなくてやっと見つけたのぉ」

ドキッ

私が部屋から出た時は誰もいなかった。佐原樹里は私と健太が一緒にいたことは知らないはず。健太が言っていないのなら気付いていない。だから今言ったことは佐原樹里の自慢話

でも新くんは・・・

一瞬だけど何かを悟った顔をした

私は今どんな顔でいるだろう。きっと動揺しているはず・・・

新くんにばれてしまったかもしれないことに心臓がドキドキしていた

「行くぞ」

「う、うん」

新くんが私の右腕を思いっきり引っ張る

健太を見ることも出来ず私は小走りになっている

手首が痛い・・・

でもそんなことも言えず新くんに着いて行くしかなかった

後ろにいる私の方を見てもくれず、引っ張られたまま駐車場に向かい、沈黙が続く中、車に乗った

どうしよう・・・

はっきり言った方がいいのかもしれない

そう思い私は

「さっき・・・」

「健太といたのか」

私が言う前に新くんが言ってしまった

やっばり気付いていたんだ・・・

新くんの声はとても低く怒っていると思える冷たさ

私は新くんの顔を見れず俯いていた

「嘘だったのか?」

私は新くんのためにと思い、嘘をついた

でもそれは間違っていたのかもしれない

自分の気持ちを気付かれたくなくて隠した嘘だった

「泣いてたらわかんねぇよ」

堪えきれず泣いていた私にそう言った



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