やさしい手のひら・後編
「座ったら?」

「う…ん」

リビングの入り口に立っていた私に新くんは言った

私はソファに腰を降ろし、新くんの動きを見ていた

なかなか新くんは私の隣に来てくれない

「はい」

暖かい紅茶を私にくれる

「ちゃんと話して」

そう言ってやっと隣に座った

「膝を洗ってもらって、私はすぐ健太の部屋から出たの…」

私は新くんの顔を見た

でも新くんは

「お前の言いたいことはそれだけ?」

えっ…

「本当にそれだけなんだな?」

疑いの目だった

やっぱり私を信用していない

念を押すかのように私に聞く

「うん、それだけ」

これ以上のことは何があっても言ってはいけない。私はさっき自分の気持ちを隠し通すことを決意したんだ

「じゃあ、なんで泣き腫らした目をしていた?」

そこまで見ていたの?

新くんの言ったことに返す言葉がなく、私は黙ってしまった



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