やさしい手のひら・後編
「ハアハアハア」

公園の前に一度立ち止まり、呼吸を整える

今、ここに健太がいる

それを考えると私の心臓はまた活発に動き出す

私は胸を押さえながらここに来てしまったことをまた悩む

一歩前に公園を跨げば健太に会える

その一歩がなかなか前に出ない

ここまで来て健太に会わないの?

会ったらまた新くんを裏切ってしまうんだよ?

いろんな囁きが交差する中、私は公園の奥を見ていた

木の下にあるベンチに誰かが座っている

健太?

目を細めて見てみると、遠くを眺めている健太が座っていた

その瞬間、胸が張り裂けそうな気持ちになる

会いたい

会って話がしたい

私はいつの間にか歩き出し、ゆっくりと健太に近付いていた

そして心の中で、新くんごめんね・・・

そう呟きながら、健太を見つめていた

3メートルほどの距離で健太が私を見つけ

「来ないと思ってた」

健太がクシャと笑う。その笑顔が懐かしくて涙腺が緩みだす

私は来てしまった

自ら地雷を踏みに健太に会いに来てしまった


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