やさしい手のひら・後編
「あ…」

一言だけ発し、下を向き

「あぁ、うまくいってる」

何を期待したのだろう

やっぱり聞かなきゃよかった…

聞いてしまってから当たり前のことなのに、もしかしたら…と考えてしまった

そんなことに期待してしまった自分がバカみたい

絶対別れることがないのに…

「新は優しいか?」

どうしてさっきから新くんの話ばかりするのだろう…

「優しい…よ」

そう答えるしかなかった

「佐原樹里は優しい?」 

お互い探り合いばかり

「あいつの気持ちが重い」

「え?」

「いつも見張られてるじゃないかって思う時がある」

「見張られてるって…それは健太が好きだからじゃ…」

健太の横顔に笑顔がない。一体、二人の間に何があるんだろう

「俺は亜美といる時が一番幸せだった」

胸がギュッと縮小されて痛くなる。また私の心を揺るがそうとする

「そんな言い方佐原樹里に失礼だよ」

私はなんとか微笑みながら、健太に言うと

「幸せって自分で掴むもんだろ?俺はもう…掴めないんだ」


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