夏恋
「おばちゃん、久しぶり~!」
彩はガラス戸を音をたてて引くと大きな声で中へ呼びかけた。
「はいはい。」
中のカウンターから顔を覗かせたのがこの店の店主、富士おはさんだ。裕也や彩が小さい頃からすでにこの店はあり、食堂の脇に小さな駄菓子屋も経営しており、そこに二人は随分お世話になったのだ。
「あら、裕くんかい。久しぶりだね。隣の娘はあまり見ない顔だけど彼女かな?」
「違うよばあさん。彩だよ!」
「…彩?」
おばさんは少し考えてる様子だった。そこに彩が前に出て、
「おばさん久しぶり! 小学校の時に引っ越した菊池彩だよ!」
するとおばさんは全てを思い出した様に目を見開き、
「ああ~! 彩ちゃんかい! 懐かしいね~こんなべっぴんさんになっちゃって!どうしてここに?」
「私またこっちへ戻ってきたの!だからまたよろしくね!」
「そうかね、そりゃ賑やかになるね!裕くんも良かったじゃない!」
「まぁね…」
「食べてくんだろ? 今日は懐かしいから無料でいいよ。好きなのお食べ!」
そういうと富士おばさんは腕を捲った。
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