キスはワインセラーに隠れて


「昨日も、思ったんだけどな……」


キスの合間に喋るのは、やめて欲しいと思う。

唇が離れた瞬間に甘い声が漏れるし、こんなにふわふわした思考では、うまく会話にこたえられる自信がないから。


「お前の味は……貴腐ワイン、だ」

「き、ふ……わいん……?」


……聞いたことない。どんな味、なのかな……?


「……いつか、飲ませてやるよ」


微笑みながら言われて、ドキン、と胸が跳ねた。

だって、“いつか”なんて。

これから先も、ずっと一緒にいてくれるみたいな言い方……


ときめく心が求めるままに、私はその後も藤原さんとキスを繰り返していた。

するとやがて、彼の手がするりとTシャツの中に忍び込んできた。

……大丈夫、だよね。藤原さんは、ちゃんと私を見てくれてるよね。

悩みを打ち明けたときだって、私を励ましてくれたもん。きっと、大丈夫……


拭いきれない不安が頭をかすめる中、彼の手が私の胸の膨らみに辿り着く。

そして感触を確かめるようにゆっくり動いたかと思ったら、その手は服の中からスッと出て行ってしまった。


「藤原……さん?」


どうして……?

見つめた先の彼は、なぜか眉根を寄せて険しい表情をしていた。


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