キスはワインセラーに隠れて
「じゃあ、それ同じ厚さに切ってくれ。終わったら茄子」
「は、はい……」
えーと、どれくらいの厚さかな。
……って、須賀さんが切ったの、キレイすぎるし!
おんなじ厚さなんて、私の技術でできる気がしない……
私が包丁を握りしめて途方に暮れていると、右隣に立つ須賀さんからものすごい視線を感じて顔を上げた。
「あ、あの……そんなに見られてると切れません」
そう言って苦笑してみたけど、須賀さんは眉根を寄せ、なぜだか険しい表情だ。
しかも、彼が見てる場所、微妙に私の手元からは外れているような……?
「……あのワイン馬鹿」
うなるように、低い声で呟いた須賀さん。
ワイン馬鹿……って。思い当たる人物は一人しかいないけど、なんで急に藤原さんのこと……
「……お前、ゆうべ藤原に会いに行ったな?」
「ど、どうしてそのこと……!?」
ま、まさか須賀さんも鼻が利くとか……?
驚いて目を丸くする私に、須賀さんが一歩近づく。
「ここ」
そして、長い腕を伸ばして私の首の後ろあたりをそっと撫でる。
それがくすぐったくて、私はびくっと肩をすくめた。
「キスマークだろ」
「ええっ!?」