キスはワインセラーに隠れて


慌ててぐりんと首を動かしてみるけど、自分ではそんな場所見えるはずもなく、首が変な風に痛くなっただけ。


「い、いつの間に……」


色んな所にキスをされたって感覚はあったけど、なんていうか、藤原さんに抱き締められてると頭がぼうっとして思考がふにゃふにゃになっちゃうから、全然気がつかなかった。


「……お前は無防備すぎるんだ」


そう言うと、首に触れていた手に力を込めて、須賀さんがぐっと私の身体を引き寄せた。

わ……この流れはマズイ!

やっぱり須賀さんの言葉、信用しちゃダメだったかも!


私が必死でもがいてもびくともしない須賀さんの広い胸からは、ペースの速い心音が聞こえてきた。

それにつられるように、こっちまでドキドキしてしまう。


「好きなのか……? 藤原のこと」


……本当のことを言った方がいいよね。

須賀さんには性別もばれているし、今さら職場恋愛禁止のことだけ気にしたって、もう遅い。

何より、須賀さんはこんな行動に出ちゃうくらい、私を想ってくれてるんだもん……

嘘をついたり、ごまかしたりすることなんて、できないよ。


「……好き、です。だから、ごめんなさい。須賀さんの気持ちには――――」


応えられない、と言うつもりだったのに、首の後ろに小さく痛みを感じて、私は言葉を継げなかった。

何が起こったのかすぐには理解できず、けれどその場所でちゅ、と音が立ったのと同時に柔らかいものが離れていった感覚がして、私は自分の身に起きたことを悟った。


ま、まさか、須賀さんまで私の首に跡を……!?


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