キスはワインセラーに隠れて
――でも、結局解決策は見つからないまま。
正直、今は藤原さんが若葉さんの申し出を断ることを祈るしかない状態らしい。
そして、風邪でお店を休んでいた藤原さんが復帰してきた今日、彼はオーナーから若葉さんのことを聞かされているはずで……
*
「――タマ、エサだぞ」
そんな声とともに、カタッと音を立てて目の前に置かれたトレー。
私が我に返ると、藤原さんが私の座るソファの隣に、浅く腰掛けたところだった。
「あ、ありがとうございま……って、なんで、こんなに?」
飲み物は、私の頼んだカフェラテにしてくれたようだけど……
それ以外に、チーズケーキ、チョコチップの入ったスコーン、それからホイップがたっぷり絞ってあるカップケーキがお皿に乗っていて、私は目を丸くした。
「なんでって……口数少ないから、腹減ってるのかと思って」
「私は子供ですか……」
「……違ったか。つーことはやっぱ、お前知ってるのか、あのこと」
そう言うと、お砂糖もミルクも入ってない、苦そうなコーヒーに手を伸ばしてひと口飲んだ藤原さん。
き、来たっ……きっと若葉さんの話だ……
膝の上でぎゅっと手を握りしめ、私は覚悟を決めた。