キスはワインセラーに隠れて


急に怖い顔をして、藤原さんが私を見据えた。その視線の先は……

――――あ。もしかして、アレ、見えてる……!?

ぱっと自分の手で首元を隠してみても、時すでに遅し。


「俺はソレを“二個”つけた覚えはない。……と、いうことは?」


やばいやばいやばい。

目が、本気で怒ってる!

私だって、好きでそうされたわけじゃないのに、なんていいわけしたら……!


「……あんのエロシェフ……」


苦々しく呟いた藤原さん。しかも、“エロシェフ”って。どうして犯人が須賀さんってバレてるの……!?


「あの……ごめんなさい。私……ぼうっとしてたみたいで、避けられなくて……」

「まさかそれ以上のことはされてないだろうな?」

「そ! そんなことあるわけないじゃないですか! 私が好きなのは藤原さんだけ――――」


……って。勢いで、かなり恥ずかしいこと宣言してない? 私。

しかも、声が大きすぎたらしく、周りのお客さんが好奇の目でこっちを見ている。

そして、隣の藤原さんはというと……あろうことか、私に顔をそむけて知らんぷりをしている。

た、他人のフリするなんてひどい……っ!


「ちょ、ちょっと、急にそっち向かないで下さいよ。私だけ変な奴みたい!」

「……今は無理」

「なんでですか、一緒に恥かいてくださいよ!」


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