キスはワインセラーに隠れて
おそらく、赤く染まっているであろう私の頬。
その理由をお酒のせいにしてしまおうと、私はグラスに口を付けた。
「……! おいしい」
「当たり前だ。一本13万の値段はダテじゃない」
「ええっ!? じゅ……」
13万――――っっ!?
ごく、と喉を鳴らして、ワインが胃の方に落ちて行くのを感じながら、私は必死で頭を回転させる。
い、今のひと口で、いくら……?
「……飲んだな?」
「の、飲んじゃいました……」
おそるおそる答えると、にやりと口の端だけで笑った彼が言う。
「支払いは、現金、カード、肉体労働の中から選べるぞ」
「な、なんですか最後の怪し過ぎる選択肢!」
っていうか支払いを請求するなんて、このワイン、プレゼントじゃなかったんですか!
「冗談だ。ほら、もっと飲め」
やっぱり、この人は私をいじめるのが大好きらしい。
そういう会話でときどき私のことを慌てさせては、ものすごく楽しそうにワインを飲み進めるという性格の悪さには、もはや感心するくらい。