キスはワインセラーに隠れて
――心臓が、壊れるかと思った。
ワインを形容する言葉をいっぱい持っているのと同じように、藤原さんはどれだけ私の心を乱す言葉を持ってるんだろう。
私だって何か言い返したいけど、彼のように気の利いた言葉は思いつかない。
ただ……これだけなら、私にも、言える。
「今だって……女でよかったって、思ってます。好きな人に、こうして見つめてもらえて。私のこと、欲しいって思ってもらえて……私、しあわせです」
さっき、藤原さんが言っていた。
私がplaisirで過ごした日々は短いものだったけど、彼に出逢えたのだから、意味のない時間じゃなかったって。
本当に、その通りだと思う。
恋愛の何が楽しいのかよくわからなかった私がこんな気持ちになれたのも、藤原さんと出逢って、彼を好きになったから。
男っぽい自分もキライではなかったけど、本気で彼に恋してる……今の自分が、前よりも好きだ。
「お前な……さっきの理性、今ので飛んだぞ」
「いいですよ。……私も、覚悟決めました」
「……上等だ」
その言葉を合図に、再び降り注ぐ激しいキス。
そして、さらされた素肌の上をすべる彼の手は確実に、私を女にしていった。
「ん、ふじわら、さ―――っ」
つながった瞬間に漏れた声は、自分でもびっくりするほど艶めかしくて。
恥ずかしいと思う間もなく与えられる快感の連続に、私は彼の言葉通りのことを、何度も実感させられた。
藤原さん、大好き――。
最後の瞬間、そんな気持ちがあふれて。
私は呼吸を荒げる彼の唇に、自分から強く唇を押し付けた。