キスはワインセラーに隠れて


「……本田。どうして、自分も辞めるだなんて――」


私は一度ロッカーを閉めて、本田の方を向く。


「……他の二人のことは知らねーけど。俺は、さ」


そう言うと、着替えを済ませた彼が、私を正面から見つめた。

本田らしからぬ真面目な表情はあの棚卸しのときの一件を思い出させて、私は少し身構えてしまう。

身体を硬くして唾を飲み込む私に、本田は言う。


「やっぱ、どーしてもごまかせなくて。環への気持ち」

「え……?」


……私への、気持ち?


「こないだ、改めてちゃんと言わせてくれって言ったのに、そのままだったよな。いい機会だから、今言うわ」


まさか……この、胸がそわそわする感じ。

私の考えすぎでなければ、もしかして、本田って……



「俺は、環が好き」



――ぶわっと、頬全体に熱が広がる感覚がした。

……そんなの、全然気がつかなかった。

ある意味藤原さんよりずっと近くにいた異性が、自分をそんな風に見ていたなんて。

でも、確かに……棚卸の時のあの行動もそういう理由からだったんだと思うと、納得がいく。


「い、いつから……?」

「んー……やっぱ、環の女装姿見てからかなー。今でもちょっと思うもん。お前、女に生まれてたら超美人だって」


……んん? 女に生まれてたら――ってことは。


この告白……まさかの藤原さんと同じパターン!?


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