キスはワインセラーに隠れて
慌てて取りに戻った木箱の中には、甘い貴腐ワインと、そのボトルの影に隠れるようにして入っていた、手書きのメッセージカード。
“猫から嫁に昇格する気があるのなら、このワインを一緒に飲もう”
カードは箱にしまったままだけど、もうすっかり暗記してしまった言葉を、私は何度も頭の中で反芻して幸せを噛みしめた。
「藤原さん……」
「ん?」
「私……本当に。女に生まれてよかったです」
そんな気持ちを与えてくれたあなたと、これからもずっと一緒にいたい。
タマを卒業して、一緒にワインを楽しめる、あなたのお嫁さんになるの。
優しげに目を細めた藤原さんに頭を引き寄せられ、彼の胸にくっついたおでこ。
目の前には、ブドウのバッジが、きらきらと輝いていた。
キスはワインセラーに隠れて
END