キスはワインセラーに隠れて
私も藤原さんみたいに、ワインの複雑な味を言葉で言い表せないかな……
そう思って色々と飲み比べてみるものの、酒量が増えていくだけで。
「……庄野。お前、飲み過ぎじゃないのか?」
「……へ?」
たまたま隣に立っていた須賀さんにそう言われて、気づく。
あれ? 私、何杯くらい飲んだっけ……?
途端に床がぐにゃりと歪んだ気がして、ふらついた私の腕を咄嗟に須賀さんがつかんだ。
「あ、ありがとうございます……」
そう言いつつも、身体に力が入らない。
「……酔ってるな?」
「酔ってません……けど、眠い、です」
勝手にまぶたがおりてきて、須賀さんの顔がだんだんぼやけてくる。
「……世話の焼ける奴だ」
迷惑そうな声が聞こえたと思ったら、ふわりと宙に浮いた私の身体。
どうやら私は米俵のように、須賀さんの肩に担がれてしまったらしい。
ここはお姫様抱っことかじゃないんですか……?
ああそっか、私、男だもんね……
「オーナー、車の鍵貸してください。……庄野が潰れたので寝かせてきます」
よかったー。車で寝かせてもらえるんだ……
ふわふわと夢の中にいるみたいな気持ちで須賀さんの声を聞いているうちに、私は本当の夢に誘われ、そのまま心地良く、深い眠りに落ちて行った――――。