キスはワインセラーに隠れて
「ん、う……」
小さなうめき声をあげて、私は寝返りを打った。
……頭が痛い。
キモチ悪いのはいくらかましになったけど、完全に悪酔いしちゃったみたい……
「――起きたか、酔っ払い」
ふいに上の方から降ってきた低い声。
そうだ、須賀さん……私のこと、車まで運んでくれたんだっけ。
「あの、ご迷惑おかけしまし――――」
言いながら身を起こし、瞬きしながら辺りを見回して、思う。
ここ、車の中じゃ、ない……?
「まさか記憶がないのか?」
私のいるベッドの脇に、腕を組んで佇む須賀さん。
「え、と……あの。ワイナリーで、須賀さんに抱きかかえられた直後から、どうやら……」
頭を片手で押さえながら視線を動かすと、どうやらここはホテルの部屋のようだった。
少し隙間を空けて置かれた二つのベッド。その向かい側にテレビ。窓際に小さなイスとテーブルのある、シンプルな部屋。
「……お前、だいぶ吐いたぞ」
「え、ご、ごめんなさい! どこか汚したりとかって……!」
「車も部屋も無事だ。……それより、自分の着てるモンを確認しろ」
「え?」
咄嗟に触れた自分の服は、そういえば今日着てきたものと違う。
うわー、自分の服汚しちゃったのか、私……
でも、レンタカーとか部屋に被害がなかったのは不幸中の幸い――――って。
これって。着替えは、誰が……?
一瞬にして背中に浮かんだ汗が、悪い予感を伴いつうっと私の肌を撫でる。