キスはワインセラーに隠れて


「そりゃアイツらも“男”であることに変わりはないが、“知らない”ぶん、俺より安全だろ」

「で、でも……!」


私としてはこうなったらむしろ、事情を知ってくれてる須賀さんが同室の方が、心穏やかに過ごせそうだったのに……!


「……そうだ。風呂場に水洗いしたお前の服が絞って置いてある。Tシャツは問題ないだろうが、あの……名前は知らないが黒い下着みたいなのは、さっさとしまっておけよ」


そんな言葉を残して、須賀さんは部屋から出て行ってしまった。


黒い下着……たぶん、ベアトップのことだ。

仕事の時は、ウエイターの制服のベスト着ちゃえば問題ないけど、今日は私服だったから、小さいとはいえ多少は膨らんでる胸を潰すために着てた、キツめのベアトップ。


それを須賀さんが水洗いしたってことは……ん?

か、完全に中身見られてるじゃん――っ!


「ぎゃー!!」


顔から火が出そうになって、枕に顔を押し付けベッドの上で脚をじたばたさせた私。

やばい! やっぱり危険すぎたよ、山梨一泊ツアー!

しかも、これから本田か藤原さんのどっちかが、この部屋に……


テンパりまくる私に追い打ちをかけるように、トントン、と扉がノックされた。

も、もう来たの? 早いよ、まだベアトップ片づけてないのに!

慌てて立ち上がり、扉に向かって「はい」と返事をすると、聞こえてきたのは……



「――タマ。なんだか事情が飲めないが、須賀さんから急に部屋を替わるように言われた。……入るぞ?」



うぅ…あなたでしたか……!

どっちかというと本田が良かった……!

ってそんなことより、早くベアトップの隠ぺい工作――――!


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