キスはワインセラーに隠れて
「お、俺! 自分が貧相なカラダだから、藤原さんみたいなちゃんと筋肉ある人の裸とか見ると、劣等感抱いちゃうんで!」
他にもっとましな言い訳は思いつかなかったのか!と自分にツッコみたかったけど、私はとにかく後ろを向いたままでそう言った。
「まぁ、確かに華奢だよな、お前」
そうでしょ!?
だから早くバスルームに行って! 目の毒!
そんな私の心の叫びは、全く届かなかったらしい。いや、むしろ、わかっているからこんなことを言うのかもしれない。
「――そうだ。タマ、俺の背中流せ」
……私に意地悪するのが趣味みたいな人だから。
「なんでそうなるんですか……」
「俺が疲れてるからだ」
出たよ、俺様発言……
こうなってしまった藤原さんには逆らえない。
でも、背中を流すってことは、さっき少しだけ見えた彼の肉体美をさらに見せつけられることになるわけで……非常に困る。
「それ、お断りすることって――」
「断る? 忠犬タマのくせに?」
それはあなたが勝手に付けたあだ名でしょうが!
「ほら、さっさと来い。……もしいつまで経っても来なかったら、今夜はお前の一番恥ずかしい過去の恋愛談を暴露してもらうことにする」
なにその中学生みたいな脅し文句……
呆れていると、後ろからふわりと飛んできたボディタオルが、私の頭の上にバサッと着陸した。
これ使って、藤原さんの背中を?
はぁぁ……基本、目をつぶってやろう、ウン。