キスはワインセラーに隠れて
いやでも、そんなに大声で反論しなくても、一発で取るなんて無理に決まってるか。
とりあえず黙っていることにした私は、本田の操作するアームをじっとにらんで、“失敗しろ~”と念を送った。
――――しかし。
「ほーらな。だから言ったのに」
私の目の前で、キモかわいい黄色のぬいぐるみをひょこひょこ踊らせる本田。
うそだ……本当に一度で取れちゃうなんて。
「一体どんなイカサマを……」
「してねーっつの。往生際が悪いぞ? さてさて、プリクラの機械は~っと」
ぬいぐるみを私に押し付けて、店の奥へと進んで行ってしまう本田。
……なにこれ。ぬいぐるみ取ってもらって、さらにプリクラ撮るなんて、なんていうか……ものすごく、デートっぽい、けど。
ああダメだ、スカートなんかはいてるから調子が出ない。
いつもみたいに男っぽく本田と接することが下手になってるよ……
「――ほら、せっかく取ったんだからコレも写そうぜ。バナナ汁びしゃー的な」
「う、うん……」
カーテンで仕切られた箱の中は、思ってた以上に狭かった。
プリクラって、こんな緊張するものだっけ……?
あ、男の人と撮るのは初めてだから余計かも。