キスはワインセラーに隠れて
すると予想通り、小羽は怒ってくれたみたい。
「え! なにそれ! だって、まだ環初めてだったよね?」
「……うん」
「それ知ってて、燃えないとかなんなの?」
「……私に色気ないから、じゃない? 胸もないしさ」
自分で言っててむなしいなぁ……そう思った私は思わず目を伏せる。
初めて藤原さんに会った時にも言われたもんね。色気も胸もないって。
山梨では私を励ましてくれたけど、やっぱりあれは私が男だと思ってるからであって、私に女としての魅力なんてほとんどないんだろうな……
だから気安く“タマ”とか呼ぶわけで、それにいちいちドキドキするのは何か違うよね……
「……環さ」
「ん?」
「好きな人でもできた?」
「……な、なんで?」
「だって、胸の大きさとか気にするの、らしくないんだもん」
わ……さすが、親友。
でも、好きな人……なのかな。
恋愛経験が乏しい私には、イマイチ確信が持てない。
「小羽……あのさ」
口を開くと、興味津々にテーブルに身を乗り出す小羽。
前に言っていた会社の先輩と順調に付き合っているらしい彼女なら、私のこのもやもやした気持ち、解説してくれるかもしれない。
「いっつも視界にその人ばっかり入ってきて」
「うん」
「話しかけられるとうまく対応できなくて」
「うん」
「二人きりだと緊張でどうにかなりそうで」