キスはワインセラーに隠れて
「俺は、本気だ。お前こそ、なんでそんなことを聞く」
そう……私もそれが不思議でならない。
須賀さんが私をどう思っていようと、藤原さんには関係のないことでしょ……?
「……俺は」
次第に早くなっていく鼓動が、中の二人に聞こえてしまうんじゃないかと心配になるくらいに、大音量で耳の奥に響く。
藤原さんは私を“男”だと思っているんだから、期待するような答えが聞けるわけないのに……
しばらく沈黙が続き、私の胸の高鳴りも最高潮に達した頃、藤原さんの凛とした声が聞こえた。
「俺は……アイツを気に入ってます。でも、それがどういう種類の好意なのか、自分でもまだはかりかねてて……
ただ言えるのは、アイツに近付く男――中でもあなたのことが一番気に食わないってことだけです」
藤原さん……
確かなことを言われたわけではないけど、それでも今の答えは、私にとってすごく嬉しいものだ。
育てていいはずのない恋心が、一気に加速してしまうくらいの……
「……奇遇だな。俺もお前が気に食わない。ま、そんな曖昧な気持ちの奴に負ける気もしないけどな」
「言ってくれますね。……須賀さんがそんなに熱い男だとは知りませんでした」
「庄野は渡さない」
「それはアイツ自身が決めることです」