キスはワインセラーに隠れて
そう言うなり降りてきた、藤原さんの形のよい唇。
私はぎゅっと目を閉じ、自分の唇を引き締めて息を止めた。
「…………っ」
そして、一度柔らかい熱が触れたと思ったらそれはすぐに離れて行き、私がうっすらとまぶたを開けてみると。
「……馬鹿。口閉じてたら味がわからないだろ」
未だ息のかかる至近距離にいた彼がそうささやき、私を睨む。
「そんなこと、言われたって……」
い、今のキスだけで、もう限界……!
これ以上したら、自分がどうなっちゃうのか、わかんないよ……
私は両手で藤原さんの胸を押し、これ以上のテイスティングから逃れようとしたのに。
「ワインがソムリエに逆らうな」
そう言い放った藤原さんにあっさり両手をつかまれ、動きを封じられてしまった。
なんなのその理屈?
やっぱり、とんでもない俺様……っ!
心の内では悪態をつきつつ、けれどあまり動くと棚にあるワインを倒してしまいそうで、激しい抵抗はできなかった。
そうして触れた、二度目のキスは。
「――ん!……ふ、ぁっ」
――――やばい。
今、思わず高い声が……!