キスはワインセラーに隠れて


「俺もまだ知らないんだ。まず環がひと口飲んでみ。で、美味しくなかったら全部お前にやる」

「なんだそれ、まずかったら俺もいらないし!」


そう言いながらもペットボトルを受け取り、キャップを開けておそるおそる飲んでみた。


「……どうだ?」

「うーん……なんか、ただバナナをミキサーにかけたみたいな? とりあえず、超ドロドロ」

「やっぱ俺も飲みたいからくれ」


どーぞ、と本田にペットボトルを手渡すと、本田はすぐに口を付けようとしたものの直前で固まる。

なんだろ? もしかして、もう匂いからアウト?


「……環さ」

「ん?」

「か……間接キスとか、お前、気にする?」

「……は?」


……何を言うかと思ったら。

いちおう“男同士”なんだし、そうでなくても本田となら、こんな回し飲みくらい気にならないって。


「俺は別に――――」

「いや、やっぱ何でもねぇ! それはお前が責任もって全部飲め!」


そう言うなりドン、と勢いよくペットボトルを置いた本田。

キャップが開いたままだったから、まだたっぷり入っていたジュースが溢れて机を汚した。


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