キスはワインセラーに隠れて
13.危険な看病
須賀さんとスタッフルームに入っていった女性は誰なのか。
彼女の言ってた“クレーム”の内容。
それらを確認する暇もないくらい休憩後は忙しくて、あっという間に勤務時間は終わりを迎えた。
そしてその時、私の頭の中はもう別のことに支配されていて、周りの同僚たちより先にさっさと帰り支度をととのえて、ロッカーの扉をバタンと閉めた。
「お疲れ、環。……なんか急いでんの?」
部屋が蒸し暑いせいか、仕事終わりで体の熱がなかなか冷めないのか、制服の白いシャツを脱いだまま何も着ようとしない本田が、私に問いかける。
いつもなら上半身裸のその姿に照れるとこだけど、今日の私はそれどころではなかった。
「うん。ちょっと、友達のとこに……」
「ふーん……友達」
友達っていうか、同僚って言うか、飼い主って言うか、好きなひ……いやいや、そんなことはどうでもいいけど、とにかく心配なんだ。
あの俺様ソムリエが野垂れ死んでいないかどうか。
さて、何買ってけばいいんだろ……
こないだ読んだ雑誌には、“男はおかゆが苦手”とか書いてあったけど、他に栄養があって消化のいいものって……
「……なぁ本田。風邪引いて熱あるときって、何食べたくなる?」