キスはワインセラーに隠れて
「……風邪? そうだな……麺類とか」
「麺類! サンキュ!」
よしよし、いいこと聞いた。
そっか、男は麺類か……こればっかりは、いくら男のカッコしててもわかんないもんね……
「環……その友達ってさ」
「うん?」
「まさか……とは思うけど。今日病欠のあの人じゃないよな?」
やっとTシャツに袖を通した本田に神妙な顔でそんなことを聞かれて、心臓が止まりそうになった。
――違うよ、って。普通の顔して言わなくちゃ。
そう、思えば思うほど、顔に熱が集中していく。
私のばか! こんな反応、わかりやすすぎるって……!
案の定、私の動揺ぶりに、本田は答えを見つけたようだ。
「……やっぱ、そうなんだ。環、あの人とどういう関係――」
「べ、べべべ別にどういう関係でもないから! ただ、いつもエラそうだし自分の世話なんて全然できそうに見えないからちょっと心配なだけ! 他意はない! じゃあな! 俺行く!」
まだ後ろで本田が何か言っていたような気もしたけど、私は更衣室を勢いよく飛び出して、そのままレストランの建物を出た。