光のもとでⅡ
――言わなくちゃ。
そうは思うのに、どうにもこうにも言い出しづらい。
一日ずらすだけなのにどうしてこんなにも言い出しづらいのか……。
メールで一方的にキャンセルしてしまった去年に比べたらまだいいほうなのに。
そこまで考えてはたと気づく。
つまりそれは、あくまでも「まだいいほう」というだけで、決していいことではないから言いづらいのだろうか。
悶々と考えていると、ツカサに声をかけられた。
「何を考えてる?」
「えっ? あっ、あの――」
そのまま口にしてしまえばよかったのに、どうして口を閉じてしまったのだろう。
ツカサは、そんな私をじっと見ていた。
「昨日のことがまだ引っかかってる、とか……?」
昨日のこと……? あっ――。
「違うっ。違うよっ? 全然関係ないこと考えてたっ」
「全然関係ないことって……?」
心底不思議そうな表情を見せるツカサに私は観念する。
「……あのね、日曜日に紅葉を見に行こうって約束をしたでしょう? それ、土曜日に変更してもらってもいい?」
恐る恐る尋ねると、
「別にかまわないけど……なんでそんなに言いづらそうなの?」
「……去年はキャンセルしちゃったし、今年は約束していた日を変更するし、なんだか申し訳なくて……」
「去年はともかく、日にちをずらすくらいで怒ったりしないんだけど……」
不服を申し立てられた気がして、思わず「ごめんなさい」の言葉が口をつく。
「だから、謝らなくていいし……。でも、なんで?」
「あ……実は、昨日帰宅したらピアノの先生から連絡があって、今週の土日に倉敷芸大の学園祭があることを知ったの。それで、その学園祭のコンサートチケットがあるから行きませんか、ってお誘いいただいて……」
「それ、ひとりで行くの?」
「ううん。先生と柊ちゃんも一緒」
「ヒイラギって?」
「佐野くんの従姉。支倉高校の二年生で、倉敷芸大の声楽科を受験する予定なの」
「ふーん……」
またしても沈黙が訪れ、隣を歩くツカサの様子をうかがう。
そうは思うのに、どうにもこうにも言い出しづらい。
一日ずらすだけなのにどうしてこんなにも言い出しづらいのか……。
メールで一方的にキャンセルしてしまった去年に比べたらまだいいほうなのに。
そこまで考えてはたと気づく。
つまりそれは、あくまでも「まだいいほう」というだけで、決していいことではないから言いづらいのだろうか。
悶々と考えていると、ツカサに声をかけられた。
「何を考えてる?」
「えっ? あっ、あの――」
そのまま口にしてしまえばよかったのに、どうして口を閉じてしまったのだろう。
ツカサは、そんな私をじっと見ていた。
「昨日のことがまだ引っかかってる、とか……?」
昨日のこと……? あっ――。
「違うっ。違うよっ? 全然関係ないこと考えてたっ」
「全然関係ないことって……?」
心底不思議そうな表情を見せるツカサに私は観念する。
「……あのね、日曜日に紅葉を見に行こうって約束をしたでしょう? それ、土曜日に変更してもらってもいい?」
恐る恐る尋ねると、
「別にかまわないけど……なんでそんなに言いづらそうなの?」
「……去年はキャンセルしちゃったし、今年は約束していた日を変更するし、なんだか申し訳なくて……」
「去年はともかく、日にちをずらすくらいで怒ったりしないんだけど……」
不服を申し立てられた気がして、思わず「ごめんなさい」の言葉が口をつく。
「だから、謝らなくていいし……。でも、なんで?」
「あ……実は、昨日帰宅したらピアノの先生から連絡があって、今週の土日に倉敷芸大の学園祭があることを知ったの。それで、その学園祭のコンサートチケットがあるから行きませんか、ってお誘いいただいて……」
「それ、ひとりで行くの?」
「ううん。先生と柊ちゃんも一緒」
「ヒイラギって?」
「佐野くんの従姉。支倉高校の二年生で、倉敷芸大の声楽科を受験する予定なの」
「ふーん……」
またしても沈黙が訪れ、隣を歩くツカサの様子をうかがう。