光のもとでⅡ
「真咲っ! おまえ、写真撮るの好きって言ってなかったっけ?」
「好きだけどー?」
「翠葉の代わりに撮ってやってよ」
 山下くんは私の持つデジ一に視線を移すと、
「あ~……代わってあげたいのは山々なんだけど、俺、デジ一の使い方はさっぱりだ」
「教えるっっっ」
 咄嗟に声を挙げると、その場がしんとしてしまった。
 そしてまた、みんなに笑われてしまうのだ。必死すぎ、と。
 もう、この際なんと言われてもかまわなかった。
 最前列の通路へ下りてきてくれた山下くんにデジ一の使い方を説明するも、基本操作は問題なく理解していた。
 色調設定は済んでいるし、モード選択も済んでいる。撮るときに必要なのはズームとシャッターボタンくらいなもの。
「山下くん、人を撮るの得意?」
「やー……静止してる人間を撮るのは慣れてるんだけど、動いてる人間を撮るのは難しいよね」
 苦笑を浮かべる様に思わず頷いてしまう。
「私も同じ。何度か試し撮りしてみたのだけど、どうしてもぶれちゃうから連写モードにしてあるの。シャッターを押している間はずっと連写されているし、一度押すだけなら二、三回連写されるのみ。最悪、このボタンを押したら録画モードになる。……お願い、できるかな?」
「がんばりましょー? その代わり……」
 ん……?
「交換条件とまいりましょうか」
「え……?」
 山下くんは人好きのする顔をくしゃりと崩し、
「知ってると思うけど、俺、御園生さんのファンなんだよね。去年も今年も姫投票で御園生さんに入れた口」
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