光のもとでⅡ
 その後、長縄跳びの召集がかかり、周りの女子が次々とフロアへ下りていく。
「私もそろそろ本部へ戻らなくちゃ……」
 少なくとも、男子人口が増える前には場所移動――。
 席を立ち、人の往来頻度が最も低い階段へ向かおうとしたそのとき、
「翠葉っ!」
 背後から聞き覚えのある声に引き止められた。
 振り返ると、中央階段から上ってきた海斗くんが手を振っていた。もちろん、上半身裸の格好で。
「たかが半裸、たかが半裸、たかが半裸……」
 呪文のように唱えてみても直視するにはいたらず、逃げるように近くにあった壁へ張り付く。と、
「悪い悪い。すぐに上着るからちょい待って。――うっし、もう大丈夫!」
 そろり、と視線を戻すと、Tシャツを着た海斗くんが私のすぐ近くまでやってきた。
「司たち会計部隊から伝言」
「伝言……?」
「そっ。こっからは観覧席で楽しんでいいよ、って」
「え……?」
「ほら、昨日はずっと本部に詰めてたじゃん?」
「……うん」
 でも、それは私の出る競技種目が少ないからで――。
「この先は女子の競技が続くし、そのあとの個人競技にしても優太先輩と飛翔で会計回せるから、って」
 なるほど……。
 言われてみれば、確かに私がいなくても集計は回せる。
 それならお言葉に甘えちゃおうかな……?
 恐る恐る赤組の観覧席に視線を戻すと、ほとんどの男子が体操服を着終えていたので、私は先ほどの席に戻り、小ぢんまりと座りなおした。
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