光のもとでⅡ
 立ち上がるように促されるも、顔を上げることができずにいた。すると、
「海斗、ジャージ」
「うぃーっす」
 そんなやり取りの末にジャージを頭からかぶせられ、もといた席まで送り届けられた。
「何、逃げるほどだめだった?」
 海斗くんに訊かれ、思わず涙目になる。
「だめっていうか……」
「ん? 何? 聞こえない」
 両隣にいるふたりに耳を近づけられ、
「だめっていうか……恥ずかしい……」
 ボソボソと答えると、
「でもさ、どっちかっていうなら脱いでるの司だし、恥ずかしいのは司じゃね?」
 そう言われてみたらそうなのだけど、どうしてかとても恥ずかしかったのだ。思わずその場から逃げ出したくなるほどに。
「相変わらず真っ赤だな」
 佐野くんにくつくつと笑われ、
「これ、さっき買ってきたばっかだからまだ冷たいよ。保冷剤にどうぞ」
 そう言ってスポーツ飲料のペットボトル差し出されたとき、佐野くんが神様に見えた。

 女子の長縄跳びが終わる頃には顔の熱もすっかり冷め、海斗くんと佐野くんにお礼を言ってジャージとペットボトルを返した。
 長縄跳びの次は、またしても女子全員による玉入れだ。
 玉入れは出る予定の競技だったけれど、昨夜痛みが出始めた時点で人と接触の恐れがある玉入れは見学することに決め、早々に先生と体育委員へ申し出ていた。
 引き続き観覧席から一階フロアを眺めていると、私の左側に座る佐野くんがそわそわし始める。
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